Life and Pages

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映画 万引き家族

とてもいい映画だった。よくできた寓話だ。毎回言っているような気がするが、邦画はほとんど観ない。年に一回見観るくらい。ジブリか、どうしても気になったものだけだ。今回はカンヌ受賞作ということもあるが、ネットでのとんちんかんな批評があったりして、わくわくして観にいった。疑似家族という題材は過去の映画でも描かれていたと思うが、なんだろう、様々な視点やメッセージが重層的に描かれていて、それでいて、とても直球なのだ。多くの家族を描いた映画では「この役者さんは上手だね」と思うのだが、今回はそうは思わなかった。演技はみんな上手い。でもこの映画は、演技をあーだこーだ言うより、描かれている気持ちが伝わってくるのだ。仲のいいということが伝わってくる。信頼の度合いが伝わってくる。疑似家族として互いに相手を選び取り、ビジネスパートナーとしての絆を深めたから仲がいいのだなどという理屈付けもいらない。怒ったり、叩いたりしなくても、家族でいられるのだ。そのことを日本人は忘れてしまっていたのではないだろうか。強くて太い人間らしさを描いている。昔ならイタリア映画にでもありそうな話だ。こんな邦画に出会えて驚いている。邦画の素晴らしさもすっかり忘れていたことに気がついた。日本にはこんな家族はいないよ、などという見当違いの批判は無視しよう。