Life and Pages

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映画 おおかみこどもの雨と雪

テレビで観たのだけれど、なかなかおもしろかった。大学に通う主人公の花は、もぐりの学生だった彼と付き合い始める。彼はトラックの運転手をしていたが、実は狼男であることを告白する。が、花の彼に対する愛情は揺るがず、二人は一緒に暮らし始める。そして子どもが生まれる。人間と狼の間に生まれた子どもを病院で生むことは騒ぎを引き起こすのでできないと思い、勉強して自然分娩で出産する。そして二人目が生まれた直後、彼が消えた。幼子と一緒に彼を探す花。人だかりのできた川を見に行くと、狼の姿のまま息絶えた彼が川から引き上げられ、ゴミ収集車に投げ入れられるところだった。
子どもたちは時々、狼に変身してしまうから、外へは連れ出せず病院にもいけない。一人でひっそりと育てていたが、夜中の遠吠えを大家さんに聞きつけられアパートをでなければならなくなった。人目につかない場所で子どもたちを育てようと、自然に囲まれた山中の廃屋を借り、作物を作って自給自足を始めようとする花。何度も失敗した後、遠巻きにしていた村人が農作物の作り方を教えてくれ食べ物が収獲できるようになる。村のコミュニティにも参加するようになる。
雪と雨の姉弟は人目があるときは狼に変身しないようにいわれているが、家の周りの自然の中では時々狼の姿に変身して自由に走りまわっていた。ある日、雪が小学校に通いたいと言い出す。絶対に狼に変身しないことを条件に学校に通い始める。一歳違いの弟の雨も一年遅れで小学校に通い始めるが、雨は自然の中で過ごすほうが楽しいと思っていた。
そしていくつもの出来事のあと、雨は狼に戻って自然の中へ帰り、雪は人間であることを選び、全寮制の中学に入る。花は一人家に残る。ここで映画は終わる。
観ている側は、物語の途中で放り出されてしまったけれど、この映画が伝えたかったことは何だろう。花は自分の感情に素直に生きる。そして彼がいなくなったあとは、子どもたちを自分の手で育て上げることを選択し、次々と行動に移していく。二人の姉弟は、ある時期まで狼として生きるのか人間として生きるのか、どちらでも選べるように描かれている。それ故に葛藤があった。花は人間として生きるとこを選ぶ。雨は狼として、自然の番人のような役割を引き受けるために狼としていきることを選ぶ。父も含めて、この四人の家族は、自分の生き方を自分で考え、覚悟を持って選び取った。この世に生まれた一つの命として、自分の使命をしっかりと全うすることを考えた結果だろう。そんなことを考えさせられた不思議な映画だった。