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神は銃弾

マッドマックスの新作の世界観に近いということで、話題になっている本だ。小説でしか描けない世界というものは確かに存在する。この本が描きだした世界の極悪さ、凶暴さ、醜悪さは恐ろしい。そうしたことをマッドマックスが描き出しているのだとしたら、映画も観たくなってきた。
この本は最近よく言われる「イヤミス」かというと少し違う。狂った世界へ、そこの住人に相応しいあり方で、郷に入っては郷に従え、とばかり入っていくのだが、それがすでに理性的だと言えるし、行動の原理原則は、内省的で、自分とは、神とは、生きるとは、と考えながら狂気の大通りを進んでいく。タイトルの意味するところは、銃弾の造形の美しさと一瞬にして人間を苦しみから解放してくれるところにあるという。
この本もミステリーとかエンタメとかジャンルで区切らないほうが正解だ。読後の印象は、カタルシスを得たというよりも、小さいながらも生きることへの希望の灯を手にした。小説の世界は広くて深い。読書の楽しみが広がった。

神は銃弾 (文春文庫)

神は銃弾 (文春文庫)