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映画風立ちぬ

まずは圧倒的なビジュアルにぶっとばされた。風の描写は秀逸。地震も当事者として、その場にいたら感じるような描き方。俯瞰ではない。倒壊だけでもない。地面が鳴動し、火が迫ってくる感覚。すごいと思った。そして、「風は吹いているかい」という言葉は、問いかけられたい言葉だし、ずっと忘れずにいようと思う言葉になった。飛行機というメカニズムは本当に美しいと思う。独り乗りの戦闘機ならばなおさらのこと。兵器であることは間違いないが、人間が空を飛ぶ仕掛けにあこがれを抱く気持ちはよくわかる。小学校の頃、堀越二郎の書いたカッパブックスの「零戦」が愛読書だった。F1マシンの美しさと通じる。F1の技術も時代が時代なら兵器として活用されているものかもしれない。荒井由美の歌はとてもこの映画にあっていた。松任谷由実は手練の強者だが、荒井由美という才能は十代の女性ならではの繊細と妖精の時期をしっかりと表現している。この才能を同時代で体験できたことはとても幸せだと思う。登場人物たちの生き方の潔さは、美しく、はかなく、頼りなくもあるが堂々と生きている。時代を憂えることがあったとしても、自分の力でできることを心に秘めて、淡々とこつこつと取り組む。時代に翻弄された人生というくくり方もできるだろうが、平和の世とて、翻弄されない人生などあり得るのだろうか。一人で生きることの意思と覚悟を持った人が、寄り添って生きていくことの美しさとエネルギー。今を生きることを、あらためて自分に問いかけた。観てよかった。
映画『風立ちぬ』公式サイト