Life and Pages

本や映画、音楽、日々の雑感

メモの魔力

話題の本を読んでみた。著者はとにかくファクトをメモとして記録し、それを抽象化(普遍化)して、他の分野に応用できないか、と考える。メモをとって終わりではなく、アイデアのきっかけにしていくまでの一連の思考をしようという提案だ。

メモを取る人は少なくない、というより、とても多いだろう。わたしもメモをとる。ただ、習慣になっていないから、メモをとれないことがある。ところがこの著者は歯を磨くように、当然のようにメモをとり続け、それをもとに世の中を、自分自身を分析する。自己分析のために、1000の質問に答え、その分量はノート30冊になったというからものすごい。

メモしなきゃ覚えておけないのはたいしたアイデアじゃないから忘れていい、というよくきく言葉には反対する。なぜなら、ファクトも創造力も問題解決には必要だから、メモは意味があるという。わたしも同意する。新しいことを言っているわけではないが、過剰なほどのメモの量とそれが生き方になっていることが著者のユニークさを形成しているのだ。

 

メモの魔力 The Magic of Memos (NewsPicks Book)

メモの魔力 The Magic of Memos (NewsPicks Book)

 

 

表現の技術

電通のCDの高崎さんの本だ。面識はないが、どんな仕事をしてきたかは知っている。題名の通り、CMなどの表現についての技術的な解説をしている本だが、CMを作ってきた方法で映画を構成する方法について書いているところはなかなか圧巻だ。実際、映画も撮っている。

CMを企画するときなど、たとえ15秒CMであっても登場人物の性格や生い立ちといった背景もしっかり作り込めとはよく言われてきたし、ある程度やってきたと思っていた。が、ここまで徹底的にやるのか、と驚いた。なるほど。負けました、勉強になりました、と言って本を閉じるわけにはいかない。もう一度、読み直して、実践したいと思う。

 

表現の技術 (中公文庫)

表現の技術 (中公文庫)

 

 

映画『アリー/スター誕生』

渋い歌声にいきなり映画に引き込まれる。この声、こんな感じの曲。老いたロックスターの雰囲気。これがなんと、アメリカン・スナイパーの俳優だとは。こんなに歌が上手いとは。ガガが登場する前に、すっかり映画に入り込んでしまった。

すっぴんのガガはシャイな小娘に見えたし、自分の歌声の力を知る瞬間、少しずつ自身を深めて行く様子、それにともなってジャックとの関係性が変わっていく様子などがとてもよくわかった。最後に歌う歌は、深く心に染み渡った。シンプルな歌詞にあんなに思いが込められるものなんだと驚いた。2時間、一緒に旅をしてきた観客ではあるが、歌詞の一つ一つにいろんな思い出が刻み込まれていた。

ストーリーは観る前からわかっていたのに、こんなに心を揺すぶられるとは思わなかった。音楽映画は本当にいい。比べる意味などないのはわかっているけれど、私が感じたのは、ボヘミアン・ラプソディフレディ・マーキュリーの半生と彼が生み出した名曲の完璧なパッケージだったのに対し、このアリーは、大勢のスターの伝説や逸話を取り込み、俳優のいいところを生かし、一つ一つの曲にナラティヴを与えた映画、ということだ。どちらも本当に楽しめた映画だ。

wwws.warnerbros.co.jp

ほどけるとける

戦友の恋」のB面という位置づけの小説。前回の主人公、佐紀にかわって美和が主人公になって、前回で語られた物語を別の視点から描いている。前作では語られなかった心情などがわかってくる。また、前作ですでに読者が知っていることを、今回の主人公は知らない。おもしろいやり方だと思う。

 

ほどけるとける

ほどけるとける

 

 

キャラクターがしっかりと作られているから、こうしたことができるのだろう。

この人は本当に上手い。冒頭からいきなり引き込まれるし、そうかもね、という思いや気配がしっかりと立ち上がっている。とても楽しい

3月のライオン14

待望の3月のライオンが本日発売。マンガは絵が苦手なものがあって、なんでも読むわけではないが、この作家の絵もストーリーも好きだ。主人公は17歳のプロ棋士で、三人姉妹の家族と仲良くなり、いろんな出来事を経て、家族のような関係が生まれた。そんな彼らを取り巻く人が皆個性的で、プロ棋士の世界の話もびっくりするほどに深く、興味を引くし、高校生の生活もまたいまどきで、リアルでもある。

そっと遠くであたたかく見守っていたい登場人物たちだ。

 

3月のライオン 14 (ヤングアニマルコミックス)

3月のライオン 14 (ヤングアニマルコミックス)

 

 

みっつめのボールのようなことば。

この本は、糸井さんのことばを拾って、一度出版された本の中から、いくつものことばを抜粋して作られた本だ。シティボーイズのコントに「びんぶたジャム」というものがあって、ジャムの瓶の裏についたジャムはなぜか余計に美味しい気がするので、その瓶の裏のジャムをこそいで、瓶につめたジャムはとても美味しい! という話で、当然その瓶の裏にもジャムがつくわけで、こんどはそのジャムをこそいで、集めて・・・と延々と続くのだが、この本は、そんなびんぶたジャムの美味しさがつまっている、気がする。

「愛犬ブイヨンにとって、ボールは獲物であり、ボールは目的であり、ボールは命そのものだった。」この行を読んで、眼をつむった。うちの犬のことを思い出したからだ。他にも読み進めていく中で、ページをめくる手がとまることがなんどもある。なんなのだろう、この本は。本当にびんぶたジャムのような本だ。 

みっつめのボールのようなことば。 (ほぼ日文庫)

みっつめのボールのようなことば。 (ほぼ日文庫)

 

 

他人だったのに。

毎年一冊でる本で、これは12冊目。糸井さんがあちこちに書いた文章を、永田さんという人が集めて、並べて、並べ替えて、組んでみて、フォントなんかもあれこれやってみて、作った本。ことしも、いっぱいいい言葉に出会いました。年末のプレゼントですね、自分のために自分で買う本です。

以前に出た本も、定期的にぱらぱらと読んでいます。たぶん、こっちの心情が変わっていくから、いつも気になる言葉に出会いますが、それはそのときどきで違う言葉なんだと思います。装丁もとても好きです。

 

他人だったのに。

他人だったのに。